こんな人は遺言を
「遺言」は、一般的には「ゆいごん」と呼ばれていますが、法律用語では「いごん」と言うのが普通です。
死ぬ間際に書きのこす文書を遺書といいますが、遺言は遺書とは少し意味合いが違い、元気なうちから自らの死後についての財産上あるいは身分上のことについて、相続人等に遺すメッセージです(もちろん死ぬ間際に書いても遺言書には違いありません)。
それにしても、欧米ではポピュラーなこの「遺言」も、我が国ではまだまだの感があります。欧米には戸籍というものが無く、相続人の特定が日本のように簡単にできないという事情もあるのでしょう。
しかし、身体の具合が悪くなってから遺言の話を持ち出すのはどうもはばかられるし、かといって、元気なうちから遺言の話というのも何か縁起でもないような気がして・・・という日本人にありがちな遠慮深いという性質が影響しているかも知れません。
遺言を家族に依頼するのに、二の足を踏みたくなるのもわかる気がします。
でも、確実に遺言をしておいた方が良いという場合があります。
子供のいない夫婦がそうです。
この場合、仮に夫が死亡すると、その相続人は妻と夫の両親です。もし、両親が死亡していれば、夫の兄弟姉妹が相続人となります。
せっかく夫が残してくれた財産も、場合によっては夫の兄弟姉妹(もし死亡していれば、おいめい)にも分けなければならなくなります。
妻が子どもを連れて再婚し、夫とその子が養子縁組してないときも同様となります。養子縁組をしてないと、夫が亡くなったとき、妻が連れてきたその子には相続する権利がありません。
したがって、もし、再婚した夫に実の子や養子がいない場合は、やはり夫の両親や兄弟姉妹らが相続することになります(妻は常に相続人なります)。ただ、この場合は、遺言をするより養子縁組をしたほうが手続き的には簡単なので、特別な事情でもなければ、縁組をすることです。
遺言がないために夫の両親や兄弟姉妹らが相続人となったとき、仮に、妻以外の皆が放棄するとしても、その手続き等で心労や費用の問題が予想されます。
こんなとき遺言があれば、兄弟姉妹には遺留分がないから、何ら彼等に手続きをお願いをする必要はなくなります。
該当する方は、今すぐ遺言の手続きをしましょう。もし、後日遺言内容を変更したいときは、再度遺言をすれば良いのです。後からした遺言が優先します。
遺言の手続きは、文字の訂正方法・署名押印・日付記入とかいろいろ形式上面倒な点があり、場合によっては遺言内容が無効になることがあります。遺言作成にあたっては、専門家に依頼した方が無難です。
自筆証書遺言は遺言者本人が自ら作成するスタイルですが、死後、家庭裁判所へ検認申立が必要です。その際は、相続人全員にその旨の申立があったことが通知されます。そこで、多少費用がかかりますが、できれば公正証書遺言にしておきたいものです。公正証書遺言だと、検認手続きの必要がないという利点があります。
なお、民法改正により2000年1月から、いままでできなかった、口がきけない人の公正証書遺言が、筆談又は手話通訳によって可能となりました。