抵当権と根抵当権よくある質問集

1.そもそも抵当権根抵当権って何ですか?

抵当権とは民法に定められた物権のひとつで、当事者の契約により発生する担保物権です。

担保とはいわゆる「借金のカタ」といったようなものです。

物権とは物(物には色々ありますが、以下不動産に限って話を進めます)に対する絶対的排他的な強い権利で、法律上限定されています。 代表的な物権としては所有権があります(これは担保物権ではありません)。

抵当権は担保の一手段として良く利用されています。担保物権にはほかに質権、留置権、先取特権があります。

抵当権と質権の大きな違いは、質権は担保差し入れ後、不動産の利用ができなくなるのに対して、抵当権はそれが可能だということです。そのため、今日不動産質権はほとんど利用されていません。

なお、 留置権、先取特権は当事者の契約により発生するものではありません。

根抵当権は抵当権の一種で、一定限度額(極度額)以内なら何回でも担保として使えるというスグレモノです。逆に、抵当権は特定の債権一回きりに使用される担保権です。

詳しくはこちらを。

2.抵当権根抵当権を設定するには、何が必要ですか?また、抹消するにはどうしたらよいですか?

設定契約は口頭でも有効ですから、厳密にいえば当事者の合意以外何もいりません。しかし、常識的には契約書を作成するのが普通です。

また、たとえ当事者間の契約が有効でも、不動産の場合は登記をしておかないと第三者に対抗できませんから、登記をするための必要書類として次のものをそろえることになります。

  1. 設定契約書
  2. 不動産所有者の実印(を押した委任状)
  3. 不動産所有者の印鑑証明書(3か月以内)
  4. 不動産所有者が会社法人の場合は資格証明書または商業登記簿謄本(3か月以内)
  5. 不動産の権利書または登記識別情報
  6. 債権者の認印(を押した委任状)
  7. 債権者が会社法人の場合は資格証明書または商業登記簿謄本(3か月以内)

抹消の場合は、上記2(ただし認印で良い),4,6,7と抹消原因証明書及び設定登記を受けた際の登記済証または登記識別情報が必要です。

なお、設定・抹消とも、会社法人が当事者の場合には、3,4,7が不要のときもあります。

3.権利書をなくしたのですが、どうしたら抵当権根抵当権を設定できますか?

権利書とは法律上「登記済証」といいますが、俗に私たちは権利書または権利証と呼んでいますので、ここでもそれにならいます。

また不動産登記法改正により権利書が発行されてない場合は、それに代わるものとして登記識別情報が通知されています。

この登記識別情報はいわゆる暗証番号なのですが、便宜上ここでは権利書と同じ扱いとして説明いたします。

権利書は再発行されることはありません。そこで、権利書の添付のないまま登記申請をすると、法務局(登記所)から「こういう登記申請があったが間違いないか」という旨の照会が申請人(権利証を提出すべき者)になされ、これに対して間違いないという回答をすることにより登記が実行されることになります。また、司法書士または弁護士の本人確認情報書面を添付して登記申請することにより、本人照会という手続きを省略して、直ちに登記実行に入ることも可能です。ただし、この場合は、本人確認情報作成費用が必要になる場合があります。

したがって、権利書がなくっても登記はできますし、逆にいえば権利書を預かったからといって債権者は安心できるものでもありません。

そうは言っても権利書を紛失しないよう注意するにこしたことはありません。手続きが厄介になることがありますから。

4.抵当権根抵当権の設定登記をするにはどのようにしたら良いですか?

抵当権や根抵当権の設定をしても、登記をしないと第三者対抗力がありませんから、債権者としては設定が終えたら直ちに登記するのが原則です。

もし、登記をしない間に他者の差押の登記がなされると、それに負けてしまうことになります(競売になっても配当がこないことがある)。

登記は申請することによって、登記簿という台帳(コンピュータ)に申請事項が記載され、記載されると登記されたことになるのです。

抵当権や根抵当権の登記は、−−−一般的に登記はすべて−−−申請がなければ勝手に登記されることはありません。

たとえ登記を受け付ける係官が、何らかの理由で設定があったことを知ったとしても、その係官が気をきかせてその登記をするなどということは有り得ません。

登記事務は、法務局(東京以外は地方法務局)で扱っていますから、そこへ行って申請することになります。郵送申請することもできますが、完了後の書類は窓口で受領します。なお、一部の局ではオンライン申請も可能です。

申請するのは誰かというと、債権者と設定者(不動産の所有者)の双方です。債務者は申請人ではありません。

もっとも債務者が不動産所有者でもある場合は、−−−そのほうが一般的ですが−−−当然申請人となります。

本人にかわり代理人が申請することもできます。この場合は本人が窓口へ行くことは不要です。

登記申請代理人は、司法書士に依頼するのが一般的になっています(非司法書士には罰則があります)。

なお、地域によりますが、当地では不動産権利登記の申請の95%以上が司法書士の代理によるもので、あとは本人申請などとなっています。

5.登記費用はどのくらいかかりますか?

登記申請をする際は登録免許税を納付します。

通常は収入印紙で納付します。

○設定及び極度額の増額登記

登録免許税   債権額または極度額の1,000分の4(0.4%)100円未満切り捨て

○抹消、変更(極度額の増額変更を除く)登記

登録免許税   不動産1個につき1,000円

上記のほかに司法書士に依頼した場合は報酬が必要です。

現在司法書士報酬は自由化となっていますので、その都度各事務所にお問い合わせ願います。

6.個人的に金を貸した場合でも抵当権を設定できますか?

もちろんできます。会社でも個人でも違いはありません。

7.だいぶ前に金を貸したのですが、これからでも抵当権根抵当権を設定できますか?

できます。ただし、貸金が消滅時効にかかっていて、債務者が時効を主張したときは、担保提供者と設定契約を結んでも絵に描いたモチとなります。

債務者と担保提供者が同一のときは、設定契約締結行為が債務の承認と考えられ、時効は中断します。もっとも根抵当権設定は個々の債務の確認をしないと中断の効果は発生しないと思われます。

なお、時効についてはこちら

8.抵当権を設定した土地にある庭木庭石は所有者が勝手に処分しても良いでしょうか?

特約のない限り、庭木庭石は土地の構成部分または付属物として抵当権の目的の一部となりますから、債権者の了解なしで勝手に処分することはできません。

畳建具については判断の難しいところですが、それが建物の使用上必要なものであれば、やはり処分不可と考えます。これらは後から付けたものや、自然に成育したものも含まれますが、農作物については別の扱いとされています。

9.土地だけで充分価値があるのに、建物にも抵当権を設定してほしいと銀行から言われました。なぜでしょうか?

建物が存在しているとき、土地のみに抵当権を設定し、それが競売となった場合は、結果的に土地と建物の所有者が別人となってしまいます。

設定時に土地建物が同一所有であったときは、競落により自動的に地上権が設定されたものとみなされます(法定地上権)。

地上権でなくても、賃借権その他の事由により建物の所有者が競売後も従来どおり利用できるとなれば競売価格は大幅に低下してしまいます。

したがって、債権者としては建物にも設定する必要があるのです。

10.抵当権を設定した更地に、建物を建てた場合、権利関係はどうなりますか?

抵当権の設定されている土地上に建物を建てた場合は、それが土地所有者のものであっても、そうでなくても、また無断建築であろうがなかろうが、土地が競売という事態になれば、債権者はその建物をも競売に出すことができます(ほとんどが出します)。ただし、建物の競売代金は建物所有者に支払われ、債権者には配当されません。

なお、設定以前から建物があったときは、前問のとおりです。

11.根抵当権がいくつか設定してある不動産を買うことになりましたが、売主が早く手付金を払ってほしいと言ってきています。ちょっと心配なのですが。

仮にその手付金が根抵当権者(債権者)に支払われたとしても、根抵当契約が終了しない限りその根抵当権登記が抹消される保証はありません。

一番安全なのは、一括決済で代金支払いと根抵当権全部の抹消登記とを同時履行とすることです。どうしても手付金を支払うというのであれば、所有権移転仮登記をしておくことです。(もちろん、そうすれば絶対大丈夫ということではありませんが。)

12.返済もとうの昔に終えたのに、登記簿謄本を見るとまだ抵当権がついたままになっていたので、債権者に抹消を頼んだら、費用を負担してほしいと言われました。なんだか、納得がいかないのですが?

返済が終えたからといって自動的に担保が抹消されることはありません。設定登記のときと同様債権者債務者(担保提供者)が登記申請することによって、抹消されるのです。

債権者が銀行等の金融機関であれば、おそらく返済終了時に債権者から必要書類が交付されているはずです。探しても見つからない場合は、前記3.の権利書紛失の扱いと同じ方法での抹消登記申請となります。

いずれにしても費用がかかりますが、その負担については設定契約時の証書に記載されていたはずです。小さい字でどこかに...。

13.他人の借金を弁済してやったが、債務者が所有する不動産には担保として根抵当権が設定されているようだ。私は、その根抵当権を債権者から譲受けることができる聞いたが?

弁済時にその根抵当契約が存続中であったときは、残念ながら債権者から根抵当権の移転を受けることはできません(債権者が譲るというのであればもちろんOK)。

根抵当契約が終了してもさかのぼって受けることもできません。ただし、根抵当契約が終了し、その旨の登記(元本確定の登記)がなされた後であれば、その担保を譲り受けることができます。また、頼まれて保証していた場合は、当然に根抵当権は移転します。

なお、普通の抵当権の場合は、根抵当権と違い、いつでも譲り受けできます。

14.居抜き店舗を買って、賃貸借契約をし、何年か営業をしてきましたが、このたびその建物に設定されていた抵当権が実行され、建物は競売にかかりました。店舗の営業権はどうなりますか?

抵当権とあなたの賃借権と、どちらが早い時期に 登記されたのかにより勝敗がきまります。早い方が勝つのです。つまり、抵当権の方が早ければ、競売を落とした人(競落人)が勝ち、その人から明け渡しを求められれば応じなければなりません。

ですから、心配であれば自ら競売に参加して一番札を入れることです。(それができれば苦労はしない?)